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資源の豊富な元素で構成される材料は、例外はありますが、人体にも優しい材料が多いと感じています。そのようなありふれた元素からなる半導体および磁性体の中には、非常に面白い物性を示すものがあります。 そのような材料を用いて、これまでに実現できなかった新規な機能を発現するデバイスの作製を目指しています。半導体については、科学技術振興機構 CRESTプロジェクトで、半導体BaSi2を用いた薄膜結晶太陽電池を目指しています。 また、ガラスやプラスチックなどの非晶質基板の上に、結晶軸が配向したSiやGe等のIV族半導体薄膜を形成しています。 さらに、強磁性体では、Fe4N, Co4N, Mn4N, Fe3Siを用いて、磁性細線デバイスやスピン注入源の作製に取り組んでいます。 どの研究も、他の研究機関と強力に連携して研究を進めています。結晶成長という物作りから、物性の評価、デバイスの設計・作製・評価、さらには第一原理計算まで、幅広いレンジで研究を行っていますので、皆さんの得意な分野で活躍できると思います。 同じ研究室内で、半導体と強磁性体の両方を扱っている点も研究室の特徴です。研究の進捗が非常に早いため、最新の研究成果は、学術論文として公開しています。 "学術論文""学会発表"画面にて、最新の研究成果にアクセスできるようになっていますので、そちらをご覧ください。


新しい半導体Ba1-xMxSi2(M=Sr, Mg,....)を用いた薄膜結晶太陽電池の開発


太陽電池を目指して様々な材料が世界中で研究されています。将来の太陽電池は、原料の省量化が可能で、資源が豊富で社会的受容性が高い安全・安心な材料を利用し、デバイスの動作原理が明確であることが重要と考えています。そのような中で、Siベースの新しい半導体材料としてBaSi2に集中して研究を行っています。この材料は、従来より扱ってきたβ-FeSi2の発光波長をバンドエンジニアリングにより制御したいと考えていた際に、さまざまな偶然が重なって、その存在を知ったものです。BaSi2は、資源が豊富な元素で構成され、禁制帯幅が約1.3eVの間接遷移型半導体ですが、間接遷移端の直上に直接遷移端があるため、間接遷移型半導体でありながら、1.5eV帯においてカルコパイライト並みの非常に大きな光吸収係数(105cm-1)を持ちます(TSF 508 (2006) 363)。したがって、光吸収係数と少数キャリア拡散長の両方を同時に大きくすることが可能な点で、従来の太陽電池材料には無い優れた特徴を持っているといえます。さらに、禁制帯幅が1.3eVと太陽電池として理想的な禁制帯幅(1.4-1.7eV)に近く、さらに、等電子的なアルカリ土類元素であるSrをBaサイトに混ぜて混晶化することで、禁制帯幅を1.4eVに拡大できることを見出しました(JJAP 45 (2006) L390)。H18年10月からH22年3月の間、JSTさきがけ研究に採択され、この間、不純物ドーピングによる伝導型およびキャリア密度の制御に成功し(APEX 1 (2008) 051403)、実用的な観点から重要なSiO2基板上においても、分光感度の高い薄膜の成長を実現し(APEX 2 (2009) 05160)、さらに、電流の取り出しに重要なBaSi2/Siトンネル接合の形成等の要素技術の開発に成功しています(APEX 3 (2010) 021301)。最近、厚さ400nmのBaSi2膜で、内部量子効率60%超を達成しました(APL 100 (2012) 152114)。 また、CoSi2/n-BaSi2ショットキー接合およびn-BaSi2/p+-Siヘテロ接合においても、太陽電池動作を実証してきました。H22年10から、大型の国家プロジェクトの1つであるJST-CREST(研究代表者)に採択され、 今後は、これまで培ってきた要素技術を統合し、他の研究機関と強く連携して、光吸収層の厚さが2μm程度のBaSi2 pn接合で、エネルギー変換効率が30%を超える太陽電池の実現を目指し、強力に研究を推進しています。

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ガラス・プラスチック上へのIV族半導体薄膜の結晶成長とデバイス応用


Siを始めとするIV族半導体は、電子デバイスの材料として広く用いられています。 もし、これらの材料をガラスやプラスチック等の安価な基板上に薄膜で形成できれば、高効率と低コストを両立する「多接合型薄膜太陽電池」や、軽くて多機能な「シートコンピュータ」が創出されます。 当研究室では、金属を触媒に用いる手法により、ガラスやプラスチック上にGe薄膜を高品質形成することに成功しました。最近では、無機半導体(GeSn)を史上最低温(70度)で結晶化したほか、プラスチック上で配向したナノワイヤを初めて直接合成しました。 現在、太陽電池応用を中心として、結晶性とデバイス評価を行っています。

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逆ペロブスカイト型強磁性鉄窒化物, 鉄シリサイド(Fe3Si)をベースとする共鳴トンネル型スピンフィルターの開発


これまで長年に渡り培ってきた薄膜結晶成長技術を生かし、資源が豊富な元素からなる特異な強磁性体をエピタキシャル成長し、電子が持つスピンを利用した電子デバイス、光デバイスを作製しようとしています。スピントロニクスでは、upスピンまたはdownスピンのどちらかを選択的に利用することが、デバイス特性向上につながります。これまでに、Fe4NがFeよりも大きなスピン偏極率をもつことをアンドレーエフ反射法を用いて初めて実証しました(APL 94 (2009) 202502)。また、平坦な薄膜のエピタキシャル成長に成功し(JCG 322 (2011) 63)、さらに、X線磁気円二色性(XMCD)測定(APL 98 (2011) 102507, JAP 117 (2015) 183906) 、スピン分解光電子分光測定(JAP 112 (2012) 013911)から、磁気構造と電子構造を評価しました。異方性磁気抵抗効果(AMR)測定から、電気伝導度のスピン偏極率が理論予想のとおりに負であることがわかり(JJAP 51 (2012) 068001) 、それを利用した電流駆動磁壁移動デバイスへの展開を行っています(JJAP 54 (2015) 028003)。FeをCoで置換したCoxFe4-xNの物性がどうなっているのかという点にも興味がわき、エピタキシャル膜を成長し(JCG 336 (2011) 40, JCG 357 (2012) 53) 、XMCD測定(JAP 115 (2014) 17C712)、メスバウアー測定(JAP 117 (2015) 17B717)、AMR測定(JAP 116 (2014) 053912)を駆使して、磁気物性、電子物性、原子配置のディスオーダーを評価しました。最近は、30年以上の論争の末、一時は決着がついたかに思えたα”-Fe16N2における巨大飽和磁化論争が再燃したため、その真偽を検証すべく、Fe4N薄膜の結晶成長で培われたノウハウを生かし、α”-Fe16N2単結晶薄膜の作製と磁気特性の評価にも取り組んでいます。FeをMnで置換したMn4N薄膜のエピタキシャル成長にも成功し、東北大グループによる先行研究と同様に垂直磁気異方性の発現を確認できましたので(JAP 115 (2014) 17A935) 、こちらの材料のデバイス応用にも取り組んでいます。このような未開の分野に進みながら、新材料の面白い特長的な物性を明らかにしつつ、デバイス応用に向けた研究を進めています。

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Fe3Siでは、CaF2/Fe3Si/CaF2二重障壁型の共鳴トンネルダイオードを利用して、スピンフィルターの実現に向けて研究しました。CaF2/Fe3Siヘテロ構造においては、伝導帯バンド不連続が2eVと非常に大きいため、室温で動作可能なエネルギーフィルターおよびスピンフィルターとしての機能が期待されます。これまでの研究で、室温においてピークバレー比が1000に達する微分負性抵抗を実現しています(APEX 2 (2009) 063006)。Fe4Nについても、共鳴トンネル型のスピンフィルターを実現したいと考えています。スピンフィルターが実現すれば、金属からだけでなく半導体からでも一方のスピンを取り出せるようになると期待されます。

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β-FeSi2を用いた受光素子の開発


β-FeSi2は、資源が豊富な元素で構成され、禁制帯幅が約0.7eVの間接遷移型半導体ですが、間接遷移端の直上に直接遷移端があるため、1.0eV帯においてカルコパイライト並みの非常に大きな光吸収係数(105cm-1)を持つなど、従来の半導体には無い優れた特徴を持っています。これまで、この材料を活性領域とするSi pn接合ダイオードにおいて、世界で初めて1.6µm帯の室温発光に成功し、現在までに、0.3mWを超えるLEDを実現しています(APL 94 (2009) 213509)。しかし、この材料の真の応用分野は受光素子にあると考えています。β-FeSi2バルク結晶を用いた受光素子においては、波長1.3μmにおいて、外部量子効率が20%に達する素子が出来ていますが(APL92 (2008) 192114) 、薄膜では結晶のドメインサイズが小さいため結晶粒界面に欠陥が多く(JAP 97 (2005) 093716, JAP 102 (2007) 103706)、さらに、Si空孔が起源と考えられる残留キャリア密度が1018cm-3以上もあるためpn制御が困難であり、且つ、少数キャリアの拡散長が極端に短くなっていて、受光特性が極端に低下しています。現在、前者については結晶成長法を根本から見直して、結晶初期過程の結晶核密度低減による結晶核拡大を試みるマイクロチャネルエピタキシー法を、また、後者については、原子状水素援用MBE法を行っています。これら2つの問題点が解決されれば、BaSi2との積層構造にも道が開かれるなど、大いに期待されます。

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