-はじめに-

 CO2等の温室ガスが引き起こす地球温暖化現象は、全人類にとって早急に対処すべき課題である。この問題に対し、これまでに様々な対策が提唱されて来たが、有効的な対処法の一つとして化石燃料による火力発電からクリーンエネルギーによる発電(太陽光発電、風力発電等)へのエネルギーシフトが挙げられている。それと同時に、化石燃料をほぼ海外に依存する日本にとって、太陽光発電等の自前で生産できるエネルギーは、エネルギー戦略上大変重要な形態である。しかし化石燃料による発電に比べて、現在のクリーンエネルギーの変換効率や電力の安定性、エネルギーの疎密性、コスト等、どれをとっても劣っているのが現状である。そしてこれからも十数年間は、商用利用を前提とした大規模発電については、化石燃料による発電からクリーンエネルギーによる発電へと置き換わることは無いと予想される。

 

 では、クリーンエネルギーはまだまだ産業的に実用化されることはないのだろうか?もちろん、そのようなことはない。特に太陽光発電について言及すると、メンテナンスフリーでありまた運転コストが少ない(初期投資額は多い)ことから、衛星や発展途上国、離島の灯台などの電力供給源として重要な役割を担ってきた。今後は、それら以外にも個人住宅用太陽光発電や、野外でのモバイル機器への充電などの民生利用が活発になっていくであろう。しかし、現状ではまだ初期投資額が大きすぎる(一般住宅用太陽光発電システムは200万円程度)ため、住宅用太陽光発電市場は活発になっていない(2004年現在は、政府の援助によって市場が成り立っている)。よってこれからは、初期投資額をより抑えるための開発が必須であるといえる。そして、初期投資額の中でもモジュール価格が一番大きいことは既知の事実であり、モジュール価格を下げていく研究開発がこれからも重要な仕事となっている。

 

 しかしながら、現在の主流のモジュールはコストが高い割りに変換効率の低い多結晶Siを用いており、その分モジュール設置数が多くなるので、結果、初期投資額を引き上げている主な原因となっている。そして、現在は製膜技術や周辺装置の改良によって変換効率を向上させているが、Siを使っている以上、理論的に見ても20%前後が限界である。一方、変換効率が〜25%と高いGaAsはヒ素を含んでおり、かつ、モジュール価格も高い。他に、CuInSeや色素増感型等もあるが、研究開発はされているものの産業化されるほどSiの性能に勝っておらず、Inのような資源寿命の短い物質をも含んでしまっている。よって安価で、また人体にとって安全あり、かつ資源の豊富な材料の探索が必要と言える。

 

 本研究室では、資源の豊富なFeとSiからなる環境半導体 β-FeSi2 を、光インターコネクション用発光受光素子や太陽電池のボトムセル用材料として研究してきた。これは、 β-FeSi2 がバンドギャップ(Eg)が約0.8eVの直接遷移型半導体であり、光吸収係数がSiに比べ2桁ほど大きい(10^5[/cm]@1.0eV)との特徴を持つためである。しかしEgが約0.8eVであるため、単体としては太陽電池材料として適さない(最適Egは1.4〜1.7eVといわれている。詳細は第2章にて解説)。

 

 そこで β-FeSi2 と同様に、資源の豊富なBaとSiから構成される「アルカリ土類金属シリサイド半導体:斜方晶 BaSi2 」について着目した。これまで、 BaSi2 は殆ど研究されておらず、研究例によってEgが1.3eVであったり0.48eVであったりと全く異なった報告がされており、物性が不明確な材料であった。本研究室では、Egが約1.3eVであり吸収係数が β-FeSi2 と同程度であるという報告例から、薄膜太陽電池の新材料として位置づけて研究を続けている。

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