BaSi2の研究の歴史と報告例

 シリサイド半導体はβ-FeSi2 を中心に、近年研究が活発になってきた新しい物質群である。しかしながら、アルカリ土類金属シリサイドであるバリウムダイシリサイド( BaSi2 )は、シリサイド半導体の一つとして位置付けられているだけで、デバイスへの応用を念頭に置いた研究がされていなかった。しかし近年、強誘電体である BaTiO3 とSi基板との緩衝層の役割を担っていることが分かってきており、 BaSi2 が注目されてきた。また、高い光吸収係数を持つことが予想されていることから、光学デバイスへの応用を目指した研究も他研究機関から報告され始めている。このように、少ないながらも研究はされている。

BaSi2 の主な研究報告例を下の表に纏めた。

発表年 実験方法 評価方法 研究結果
1963 バルク状のBaSi2について20〜1000℃まで変化させ
抵抗の温度依存性を測定
4端子法 Eg=0.48eVであることを確認
1974 多結晶のBaSi2を用いて20〜800℃までの
抵抗の温度依存性を測定
4端子法 Eg=1.3eVであることを確認
1978 多結晶BaSi2を用いて高温・高圧下で相転位させ、
格子定数を測定
XRD, 4端子法 斜方晶から三方晶に相転位, 斜方晶はEg=1.3eV
1980 多結晶BaSi2と多結晶SrSi2を組み合わせて
Ba1-xSrxSi2を作製
XRD BaSi2のモル分率が増えるほど格子定数が伸長
1991 BaをSi(001)基板上に室温で堆積し、
アニール温度による変化を観察(SPE法)
LEED, AES アニール温度が600℃を超えてから
BaSi2が形成されたことを確認
1991 RDE法によるSi(001)基板上への成長
(基板温度840℃)
RHEED,SEM エピタキシャル成長を確認
1992 BaをSi(001)基板上へ数ML堆積し、550Kでアニール XPS, XAES BaSiの形成を確認
1993 RDE方によるSi(111),(001)基板上への成長 RHEED, TEM 840℃でBaSi2の形成を確認
1994 Si(001)基板上にバリウムを室温で堆積し、
試料を100〜1000℃までアニールし、
温度による変化を観察(SPE法)
MDS, TDS BaSi2はアニール温度を400〜500℃としたときに
形成され、600〜800℃で形成を確認し、
800℃以上はBaが再蒸発するため無くなっている
1995 バルク状の多結晶BaSi2について温度と
圧力の変化による相転移と抵抗の温度依存性を測定
4端子法 斜方晶、立方晶BaSi2はn型半導体であり、
三方晶BaSi2は金属であることを確認
1995 三方晶BaSi2の磁化の温度依存性を測定 SQUID 6.8Kまで、三方晶BaSi2は超伝導を示す
1996 真空中でSi(111)基板上にBaを蒸着し、
540℃、600℃でアニール
LEED, AES 600℃の時BaSi2
エピタキシャル成長したことを確認
1996 Si(001)基板上にBaを室温で1ML,4ML堆積し、
RT〜1200℃までアニール
AES,LEED アニール温度350〜500℃で形成されつつあり、
500〜800℃で形成を確認し、
800℃からはBaの再蒸発のため無くなっている
1996 斜方晶BaSi2に高温状態で高圧をかける XRD, 4端子法 三方晶、立方晶に相転位した
1998 RDE法によりSi(001)基板上にBaを2ML蒸着(@700℃)
室温でバリウムを2ML堆積後、600℃でアニール(SPE法)
LEED, AES RDE、SPE法共にBaSi2の形成を確認
2002 バルク状の多結晶BaSi2で吸収特性と
電気抵抗の温度依存性を測定
4端子法 Eg=1.1eVであることを確認
2002 Si(001)基板上に630℃でBaを2ML蒸着(RDE法)
Si(001)基板上に室温でBaを2ML堆積後、630℃でアニール
STS Eg=1.3eVであることを確認
2002 第一原理計算でDOSやEg等の推定 擬ポテンシャル法 Eg=0.85eVと算出された
2003 第一原理計算でDOSやEg等の推定 擬ポテンシャル法 Eg=0.457eVと算出された
2003 MBE法とイオン注入法でBaSi2を成長 HEED, AES BaSi2が成長
2004 ブリッジマン法によるBaSi2結晶の成長 XRD, EPMA BaSi2以外の様々な結晶が成長
2004 第一原理計算によるDOSやEgの評価 FLAPW Eg=0.83eVの間接遷移型であることを示唆

△上に戻る