「シングルチャンネルシムコイルの電力最適化手法の開発」


要旨


MRIでは,静磁場の不均一性を補正するシミングが必要であり,シングルチャンネルシムコイル (SCSC) はこのシミングに使用するコイルの一種である.電力効率が低いシムコイルは,自身の発熱により,長時間のMRIの使用において静磁場のドリフトを生じさせる.この問題を解決するため,本研究では,電力効率が最大化されたSCSCの設計手法を提案する.この手法では,静磁場不均一性を表す項と,電力最小化項を足し合わせた評価関数を,準ニュートン法を用いて最小化する.この手法を用いて0.3 T永久磁石磁気回路用SCSCの設計,製作を行い,静磁場の補正実験と長時間の連続撮像実験を行った.その結果,静磁場の不均一性を表すRMS値を21.7 ppmから14.2 ppmに改善し,消費電力を,電力最適化されていないSCSCと比べて約73 %低減させる事に成功した.また,長時間撮像時の静磁場のドリフトは1 ppm以下に抑えられた.これらの実験を通して,MRIにおけるSCSCの電力最適化手法の有用性を示した.