「新しいアプローチによるNMRマイクロスコープの開発」


要旨


従来のNMRマイクロスコープ(MRM:MR microscope)の問題点を解決するために、既設の臨床MRI用超伝導磁石の静磁場のみを利用した、新しいタイプのNMRマイクロスコープを開発するための研究を行った。
 RFプローブと勾配磁場コイルが一体となった、プローブヘッド(1H共鳴周波数63.89MHz)の開発を行い、臨床用MRI装置(GYROSCAN ACSⅡ:Philips)の1.5Tの静磁場を利用したNMRイメージングシステムを構築した。また、画像再構成などを行うシステムとして、パーソナルコンピュータを用いた高速画像再構成・表示システムを開発した。そして、その評価のために、2種類の水ファントムとラット尾部の水平断層像を撮像した。その結果、信号加算なしでも100μm×100μmの2次元面内分解能が達成されていることを確認した。また、このような、既存のMRIに付加して使用するMRIシステムについての考察を行い、対象に合わせたプローブヘッドとリアルタイム画像再構成システムと組み合わせることにより、新たな可能性をもったMRIを提案した。
 以上の結果から、このシステムは、MRMの充分な撮像能力と、そして利用する臨床用MRIシステムの変更が一切不要であるという大きな利点を有しているため、MRMの普及に大きな役割を果たす可能性を持つことを結論した。