「バルク高温超伝導磁石を用いたMRIの開発」


要旨


理化学研究所において,YBCO系のバルク高温超伝導体を用いて世界で初めて開発されたNMR用超伝導磁石(静磁場強度4.7T)を用い,バルク超伝導体を用いたMRI(Magnetic Resonance Imaging)システムとしては世界初のシステムを開発した.室温開口径として20mmと23mmを有する2種類のバルク超伝導磁石に対し,前者に関しては外径8mm,後者に関しては外径10mmのNMR試料管用の勾配磁場プローブ開発した.そして,この2種類の磁石に対し,二つの勾配磁場プローブを用い,MRIを用いた静磁場均一性計測と,キャピラリファントムと植物サンプルの撮像実験を行った.その結果,静磁場中心の直径6mm球の領域におけるRMS値で評価した静磁場均一性は,それぞれ1.2ppm,2.0ppmであった.また,キャピラリファントムや植物サンプルでは,静磁場と勾配磁場の不均一性による画像歪みが観測されたが,幾何学的構造の把握は可能であった.以上の結果,バルク高温超伝導磁石における静磁場均一性に関しては,改善すべき点が残っているが,勾配磁場コイルの改 良や,画像歪み補正法の適用により,本システムは,超小型高磁場MRIシステムとして有望であると結論した.