「小型永久磁石MRIにおける静磁場の均一化と安定化」


要旨


静磁場の均一性と安定性は,MRIにおいて画質を左右する重要な要素である.永久磁石を用いたMRIは,低価格やランニングコストが抑えられる,省スペースといった利点があるが,一方で静磁場の均一性と安定性に大きな課題がある.均一な静磁場分布を実現するため,シミングと呼ばれる作業が行われるが,小型永久磁石MRIにおいては,狭い磁極間ギャップを要因とした技術的困難が存在する.また,シムコイルや勾配磁場コイルの発熱と環境温度の変動により,中心静磁場強度や静磁場分布が変化する.これらの問題を解決するため本研究では,シングルレイヤーシムコイル(SLSC)の新設計手法の開発と,永久磁石磁気回路内への恒温水の通水を行った.開発したSLSCと通水のための水冷板の厚さは合計約 6 mm で,ギャップスペースの限られた永久磁石MRIには有用であった.また,静磁場分布計測と連続撮像実験により,静磁場の均一性と温度安定性がどちらも向上したことを確認した.