筑波大学 理工学情報生命学術院 数理物質科学研究群
電子・物理工学専攻 藤田・伊藤研究室
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カーボンナノチューブの位置制御技術

・EB-CVDフェロセンを用いた気相ナノチューブ成長の位置制御

 さらに気相ナノチューブ成長において成長位置制御もナノ3次元構造体を用いて行うことが可能です。 図1にフェロセンを用いて形成したEB-CVDドットに対してエタノールCVD法による気相ナノチューブ成長を行った 例を示します。ドット中に析出した鉄微粒子を一度大気中酸化処理で表面のアモルファス層を除去し、エタノールCVDに よって鉄微粒子から直径1nm程度の単層ナノチューブが成長する事が判りました。鉄微粒子へのCVDプロセス温度は 800℃です。基板上に張り付いたナノチューブ観察にはリターディングモードでのSEM観察が有効です。リターディング モードとは平坦な試料に負の電圧(リターディング電圧)を印加して一次電子線を試料直前で減速させる方法であり、 500eV〜1keVの加速電圧が用いられます。図2で、明るく見えている白線は、ナノチューブの周囲の電子線誘起電流 (Electron Beam Induced Current:EBIC)によって形成された像コントラストです。電子線照射で誘起される絶縁体表面 の導電性(EBIC)と、またナノチューブ周囲の絶縁体表面が高い収率で二次電子を放出するため、ナノチューブを明像として 際立たせらまる。しかし見えているサイズ(太さ)はナノチューブの真のサイズではありません。図2では画像右上部に ドットから成長したナノチューブが複数確認でき、またそのチューブの太さは0.72nmとなっています。しかしこれまでの 研究ではドットからのSWCNTの成長確率は5〜10%程度と低いのですが、ともかく基板上に1個の鉄微粒子を形成し、 そのピンポイントの位置からナノチューブを成長させることが可能であることを示されたわけで、究極のナノチューブ 成長位置制御技術への発展が期待されます。


図1 基板上の鉄微粒子から成長したナノチューブ


図2 ナノチューブのSEM画像(リターディングモード)