深層学習による拡散MRIの画像歪み補正の研究
生体内の拡散は,水分子の動きやすさを表す量です.拡散をMRI撮像により画像化した
拡散強調イメージング(diffusion weighted imaging; DWI)やそこから計算される拡散テ
ンソルイメージング(diffusion tensor imaging; DTI)を用いると,脳内の微小出血の
発見や微細構造の描出をすることが出来ます.
しかし,DWIには,撮像法に由来する歪みが発生するという欠点があります.この歪み
を補正するため,従来多くの歪み補正法が考案されてきました.非常に正確な補正ができ
る方法もありますが,診断に用いない追加撮像や画像以外の情報が必要となったり,
計算に非常に長い時間がかかったりと,臨床で用いる上では多くの課題があります.
それらの課題を解決する手法として注目されているのが深層学習(deeplearning; DL)を
用いた歪み補正です.深層学習を用いることで,追加撮像や追加情報が必要なくなり,
あらかじめ学習を行っておけば短時間で補正を行うことができます.深層学習の中でも
主流となっているのが,畳み込みニューラルネットワークの一種であるU-Netを用いた
補正法です.
当研究室では,U-Net以外にも様々なDLモデルを用いて歪み補正を行っています.例と
して,近年画像処理DLの分野でU-Netより性能の良いモデルとして注目を集めている
Transformer型のモデル(Trans-DisCo)や,1つの学習済みモデルで様々な画像の補正
ができるregistration型モデルが挙げられます.実際にTrans-DisCoでは,U-Netよりも
正解に近い歪み補正を行うことが出来ました.
今後も様々なモデルを用いた歪み補正を行っていきます.
文責 高橋絵里花