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β-FeSi2を用いた受光素子の開発

β-FeSi2は、資源が豊富な元素で構成され、禁制帯幅が約0.7eVの間接遷移型半導体ですが、間接遷移端の直上に直接遷移端があるため、1.0eV帯においてカルコパイライト並みの非常に大きな光吸収係数(105cm-1)を持つなど、従来の半導体には無い優れた特徴を持っています。これまで、この材料を活性領域とするSi pn接合ダイオードにおいて、世界で初めて1.6µm帯の室温発光に成功し、現在までに、0.3mWを超えるLEDを実現しています(APL 94 (2009) 213509)。しかし、この材料の真の応用分野は受光素子にあると考えています。β-FeSi2バルク結晶を用いた受光素子においては、波長1.3μmにおいて、外部量子効率が20%に達する素子が出来ていますが(APL92 (2008) 192114) 、薄膜では結晶のドメインサイズが小さいため結晶粒界面に欠陥が多く(JAP 97 (2005) 093716, JAP 102 (2007) 103706)、さらに、Si空孔が起源と考えられる残留キャリア密度が1018cm-3以上もあるためpn制御が困難であり、且つ、少数キャリアの拡散長が極端に短くなっていて、受光特性が極端に低下しています。現在、前者については結晶成長法を根本から見直して、結晶初期過程の結晶核密度低減による結晶核拡大を試みるマイクロチャネルエピタキシー法を、また、後者については、原子状水素援用MBE法を行っています。これら2つの問題点が解決されれば、BaSi2との積層構造にも道が開かれるなど、大いに期待されます。

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