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資源が豊富な元素で構成される半導体BaSi2を用いた薄膜結晶太陽電池の開発

多種多様な太陽電池材料が研究されていますが、将来の太陽電池は、資源が豊富で安全・安心な材料で構成され、 デバイスの動作原理が明確であることが重要です。そのような中で、Siベースの新しい半導体材料としてBaSi2に集中して研究を行っています。 この材料は、さまざまな偶然が重なって、手にしたものです。BaSi2は、資源が豊富な元素で構成され、禁制帯幅が約1.3eVの間接遷移型半導体ですが、 間接遷移端の直上に直接遷移端があるため、間接遷移型半導体でありながら、1.5eV帯において薄膜太陽電池材料の代表格であるカルコパイライトを超える非常に大きな光吸収係数 (105cm-1)を示します(TSF 508 (2006) 363)。したがって、大きな光吸収係数と大きな少数キャリア拡散長の両方を利用できる点で、 従来の太陽電池材料には無い優れた特徴を持っているといえます。さらに、禁制帯幅が1.3eVと太陽電池として理想的な禁制帯幅(1.4-1.7eV)に近い点も特徴です。 これまでの研究で、BaSi2を用いたヘテロ接合型太陽電池でエネルギー変換効率約10%を達成し、また、ホモ接合型太陽電池の動作も実証してきました。 より高効率な太陽電池を目指すため、基礎に立ち返り、ここしばらくの間は高品質なBaSi2膜を如何に形成するかに焦点を当ててきました。 これまでの研究から、BaSi2では、点欠陥の内、Si原子が一部欠けたSi空孔が形成されやすいことが、 第一原理計算から明らかになっています。これに対応して、実験により明らかになった高品質薄膜の形成方法は、ややSiが過剰に供給された状況で結晶成長すること、不純物を僅かにドーピングすること、 そして、結晶成長後に原子状水素を照射すること、または、高温でアニールすることです。 これらの方法により、光照射時のキャリア生成能力を示す分光感度の値が、この5年間で2桁以上も向上してきました。このように、光吸収層として機能するBaSi2膜は、ほぼ完成に近づいたといえます。 現在、電子輸送層やホール輸送層と組み合わせることで、BaSi2膜で生じた光生成キャリア(電子、ホール)を分離する機構をデバイス内に設けることに取り組んでいます。 写真001番 写真001番 写真001番 写真001番


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