MR Fingerprintingの撮像高速化と応用

MRIは医療現場でも欠かせないものとなっていますが,検査を受けられたことのある方は「時間がかかる」というイメージを持たれているのではないでしょうか。MRIの検査は一般的に30分前後かかっており,これは複数の方法による撮像を別々に行っているためです。

 

MRIでは,T1やT2とよばれる核磁化の緩和時間や,プロトン密度,拡散などといった,組織に関する様々なパラメータを計測することができます。従来は,これらの強調画像をそれぞれ異なる撮像法によって得るのが一般的でした。そこで発想を大きく変え,これらを一度の撮像ですべて定量的に求めてしまおうというのがMR Fingerprinting(MRF)とよばれる新たな撮像手法で,2013年,Natureの論文にて発表されました。Fingerprinting(指紋法)と名付けられているのは,撮像からマッチング,定量マッピングまでの一連の流れを指紋認証のプロセスになぞらえることができるためです。

 

当研究室では,このMRFを研究室内の装置に実装するほか,骨軟部組織への応用実験を進めています。さらに,信号の取得方法や画像再構成の方法をシミュレーションも利用しながら工夫することにより,臨床用MRI装置にも実装可能な単純なデータ取得方法を採用しつつも,MRFのさらなる高速化を目指しています。医療現場にも応用できれば,患者さんの負担を低減できるだけでなく,従来の定性的評価から定量的評価へと画像診断のパラダイムが大きく転換することも期待されます。

 

担当・文責:佐々木 椋一 (2018年4月12日)

 

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