小児の骨年齢計測

骨年齢とは骨の生物学的成熟度を年齢で表したもので,最も未熟な段階を0歳,日本人では成人に達した段階を男子は16.1歳,女子は14.7歳としています.骨年齢の判定は一般的には小児の発達障害の診断を目的として行われますが,年齢制限のあるスポーツの国際大会での年齢詐称防止やスポーツタレントの発掘に用いられることもあります.骨年齢は手部の骨化の程度により判定されており,これまでは手の単純X線による方法が主流でしたが,放射線被曝の問題から成長科学の研究やスポーツ医学への応用のため適用することは出来なくなっています.

 

これに対し,MRIを用いることができれば,X線と同様に骨の解剖学的画像を,放射線被曝なしに計測することが可能となります.また,MRIにおいては,三次元的に撮像できるため,X線では重なり合うために画像上の分解が難しい手根骨などの形状を,三次元的に解析できるという利点があります.さらに,MRIでは軟部組織も可視化できるため,骨へと変化する軟骨を抽出することもでき,小児の成長に関する新しい情報が得られる可能性もあります.

 

しかし,全身用MRIでの計測は,閉鎖された空間での計測となり,鎮静剤の投与が必要となるなど,小児の精神的負担が大きく,骨年齢計測の現実的な手法とはなり得ません.そこで,本研究ではオープンな環境で撮像できる小児の手専用の小型のMRIを開発しています.

 

MRIによる骨年齢判定は世界初の試みであり,これまでに計測システムの開発や撮像プロトコルの検討を行ってきました.また,多数の小児被験者を計測することで,MR画像による骨年齢判定の有用性を示してきました.

 

今後は,MR画像に基づく判定法の確立,新しい骨年齢判定法の検討,更なる装置の小型化,コンピュータ支援診断(自動解析)の開発など研究を進めていきたいと考えています.

 

担当:河野,内海,稲村,石澤

 

 


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