MRIを用いたラット肝臓の定量的磁化率マッピング
MRIの臨床応用として、造影剤である超常磁性酸化鉄(Superparamagnetic iron oxide; SPIO)を用いた肝臓の造影検査があります。正常な肝臓の場合、肝臓内に取り込まれたSPIOは肝臓全体で吸収されますが、癌化した肝臓の場合、腫瘍のまわりでのみSPIOが吸収されます。そのため、SPIOの蓄積量の推定により、肝癌に対する放射線治療マージンの定量評価につながると期待されます。
近年、MRIにおける鉄沈着の評価方法として、MRI撮像によって得られるMR画像の位相成分から磁化率分布を画像化する定量的磁化率マッピング(Quantitative susceptibility mapping; QSM)が注目されています。磁化率とは、印加された磁場に対して物質がどのように磁化されるかを示す物性値であり物質固有です。磁化率はSPIO中の鉄濃度に比例するため、磁化率分布からSPIO蓄積量を算出することができます。
当研究室では、SPIO投与下のラット肝臓に対してQSMを行い、SPIO濃度を推定する研究を行っています。QSMでは、背景磁場除去などの前処理により位相画像から局所磁場分布を算出した後、磁場と磁化率の関係式に基づいた最小二乗法により磁化率分布を推定します。SPIOを投与した肝臓としていない肝臓でQSMを行ったところ、SPIOを投与した肝臓では、肝臓内に磁化率の変化が見られました。また、SPIO濃度と磁化率の関係から、磁化率分布から肝臓に蓄積した濃度と同等の濃度を推定することができました。
担当・文責:中村 浩也(2024年8月27日)